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彼女は、その時々で
私の呼び方を変える。
彼女自身、無意識だし
明確な線引きはないけれど
大体、
他の人がいるときと
二人きりで話しているときと
で、分かれる。
他の人がいるときは
呼び捨てで
二人のときは
ちゃん付けのあだ名。
あとは、
彼女が私にアドバイスをくれるときなんかは
呼び捨てになる。
逆に
職場でも他愛ない話をするときは
ちゃん付けになったりする。
今まで気にもしなかったけれど
彼女自身、
気が張っているときとそうでないときとで違うのかな
なんて思う。
少し寒くなった頃、
他の人も含め
また泊まりに行く機会があった。
布団を何枚か敷いた上に、
複数人で雑魚寝をした。
私は、彼女の隣に寝ることになった。
朝、起きて布団の中で伸びをした。
すると
「○○ちゃん」
いつもより高い小さい声で
私の名を呼ぶ
彼女の声が聞こえた。
隣を見ると
掛布団の隙間から
こちらを見る彼女と目が合った。
目が合うと
彼女は嬉しそうに
くすくす笑った。
また布団をかぶり、
また隙間から目を出す。
また布団をかぶる。
目が合うたびに
布団の中で
くぐもった声でくすくす笑う。
‥‥‥
同性だろーが異性だろーが
これをかわいいと思わない人間は
果たしているのだろうか‥。
無邪気な笑顔に
「何やってんの」
なんて笑いながら目をそらすのが精一杯で
私は
抱き締めてやりたい気持ちを
必死で抑えた。