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彼女が夏に、

一週間の休みをとることになった。

一週間、会社に来ない、

単にそれだけのことである。

特段何も気にならなかった。

一年前の入社一年目の頃も、

仕事に必死で

一時的に同期のいない職場について

特に意識しなかった。

今回もそんなもんだろうと思っていた。







ところが、である。



彼女が出社しない初日から

寂しくなった。

死にそうに。


普段は書類にまみれてきったねー彼女のデスクが

キレイに片付いていて

何も映し出していない真っ暗のパソコンの画面をチラと見るにつけ

何してんだろ とか

会いたいな とか

ぼんやり思った。



彼女の甘い目線とか

彼女の甘い声とか

まったく無くなると本当に寂しい。

彼女が私の心を

こんなに占めていたとは。





休み中も、彼女からメールが届いてはいた。

近郊に旅行に行けば

感想と写メが届く。




メールもいいけど

あまりに彼女が恋しくなった私は

彼女の休暇三日目の夜

電話した。




他愛のない話をしながら‥

でも一方で、驚くほど胸が高鳴っている。

久しぶりに話すから興奮してんのかしら。




ふと

“私がいなくて寂しかった?”

と彼女が聞いた。

私は素直に“うん”と答えた。



彼女は嬉しそうに“ふふ”と笑った。


あー、こーゆーふうな

照れたような含み笑いがすきなんだ。



いつも私がからかうと

彼女はこんなふうに笑うんだ。

こんなふうに笑ったとき

私はとてつもなく嬉しいんだ。





おやすみを言い合って

電話を切った。

だいぶの長電話だ。



切ったあとも

どきどきしていた。