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「口に出さなくても分かる」

ってのは

私の勝手な考えだったのかもしれない。

23年間当たり前だと思っていたことは

きっと世の中に無数にある感覚の

ごく一部にすぎない。

よし。

彼女には素直に気持ちを口に出そう。




◆◆◆



そう決心したはずだが。

そうは言っても‥

‥なかなか簡単にはいかない。

だいいち、気恥ずかしい。

私は

(自分で言うのもはばかれるが)

超・かっこつけ なのだ。

素直に‥素直に‥。

うーむ。

ムズい。


当惑する私をよそに

彼女は私に屈託なく話しかけてくる。

新しいスカートを履いてくれば

「どう?」と感想を求められ

私は「かわいいね。似合ってる」

なんて到底言えるわけもなく

冗談を言って茶化したりした。




そもそも女同士なのだから

「かわいい!私も欲しい〜」

なんて騒ぐのが通常であるところ、

なぜか彼女を相手にすると

違う気持ちが先立ってしまったりする。

そんな感覚になるのは

彼女だけ。



同僚で昼食をとっていたときに

髪型の話になった。

彼女は髪を切りたいらしい。

一緒にいた同期の友達や先輩が

アドバイスなんかしている。

私は特に何も言わずに

食事をしながらみんなの話を

聞いていた。



すると彼女が突然私の方を向いた。

「green_labelは?」

いきなり水を向けられた。

答えに窮した。

だって‥

「どう、思う‥?」




彼女の声が

なぜか

甘いから。


冗談でそうしているんだろうけど

ぶりっこっぽくても

破壊力は抜群であった。


私は「なにそれ」と

その聞き方を笑ったけれど

内心穏やかではない。

そして

そんな自分を客観視しても

内心穏やかではない。



相手は、同性なのに‥?

◆◆◆