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彼女は

海外にあまり行ったことがなかった。

社会人になった年の夏に

南国のリゾートに行ったことがあるらしい。

それだけだ。





「せっかく長期休みとれるんだから海外行きなよ」

といつも言うのだけれど

しきりに

「コワイ」とか「そんな勇気ない」とか

ダダをこねた。




私は

学生時代に旅行によく行った。

必死にバイトをして

節約して

やっと貯めたお金で

アメリカも

ヨーロッパも

アジアの小国も

とにかく貧乏旅行に精を出した。


夢かなって

短期ではあるけれど

留学も果たした。





世界の広さに出会って

受けた衝撃は

言葉に表せない。

漠然とした大きなものに飲まれ

ドキドキして

自分の小ささを知る。











だから彼女に、それとなく何度か勧めた。

海外に行ったら

絶対イイ、と。





ただそんなの、全員がそうとは言えない。

でも彼女は絶対イイと思う。

私はそう確信していた。

間違いなく自信がある。






  ○○  ○○  ○○





冬のある時期に

彼女が休みをとることが決まった。

課内で決めたらしい。



「休み、合わせられないの?」

と聞かれた。



正直言って

その時期は超・超忙しかった。







でも‥‥‥



ここで合わせられなかったらどーする!








休みを即決。






彼女に

世界を見せてあげたい。





私は願望に負け


煩悩に負けた。







海外行こうよ

と私が言うと

彼女はダダをこねなかった。

海外コワくないの?

と笑いながら聞いたら、

真顔で、ただ、加えて甘えるように答えられた。

「green_labelが一緒だったら、イイ」




クッソー。

そんなに私の心臓に矢を放つな。




「テロがないとこだったら、どこどもいいよ」


小さな声で、彼女はつけ加えた。