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「大好きな曲だったから。」
ステージのアンコールで
最後の最後に歌った曲、
それを指して、彼女はつぶやいた。
表情豊かな彼女だけれど、
まさか泣くとは思わなかった。
私はなんだか
かける言葉が見つからなかった。
よく分からないけれど、
彼女の涙に
胸が
いっぱいになった。
好きだから。
好きな曲だから。
だから彼女は涙を流した。
そのことがなんだか無性に羨ましくもあり、
歯がゆくもあり、
そして
愛おしかった。
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言っておくが
私は、
彼女に触れたいと思ったことなどない。
ただ、少しでも一緒にいたい。
やりたいことはやらせてあげたい。
オーロラが見たいと言ったら
北の涯てまで連れていくし、
そこで彼女が「寒い」とぐずったら
必死で暖をとるし、
彼女が助手席で寝ても
どこまでも運転するし、
‥‥
欲しいものはあげたい。
高価なものでなければね。
どんなわがままも聞いてあげる。
何よりも、彼女の笑顔が見たい。
それだけである。
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彼女に涙を流させた、彼女の大好きな曲は、
10年以上前に
大ヒットして、
CDが何百万枚も売れた。
そのアーティストの
代名詞のような曲だった。
私はそれまで
売れまくった曲より
隠れた名曲ばかりを聴いていたから
売れた反動でその曲もそんなに好んでいなかったけれど
2008年のクリスマスイブの夜から
何度も何度も
聴いている。
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